2021/09

超古代文明

「人が考え始めた時」でも少し触れましたが、この地上で文明が始まったのは、歴史上、紀元前5000年くらいからとされていますが、もちろんそれは、人間が記録を辿って研究できる範囲で、ということ。確固たる証拠が残されていなくても、伝説として残る「超古代文明」については古くから多くの人が関心を寄せてきたようです。

ここでいくつか、代表的なものを上げてみたいと思います。

・アトランティス
かつて大西洋にあったとされる巨大な島(大陸)。初出はギリシア哲学者プラトンの著書。

・レムリア
かつて存在したとされる大陸。場所に関してはインド洋、太平洋と様々な説がある。スピリチュアル界では人気があるイメージ。

・ムー大陸
かつて太平洋にあったとされる大陸。学術的には否定されているが、多くのスピリチュアリストや宗教家などが、実在のものとして著作を残している。

・アガルタ
伝説の地下都市。超古代文明というよりは、地球空洞説における象徴のような存在。

この中で、アトランティスに関しては、あのプラトンの著書が初出ということなので、少し詳しく見てみたいと思います。

■アトランティスについて

「アトランティス」という名前はきっと多くの人が耳にしたことがあるのではないでしょうか。シュタイナーやエドガーケイシーなどの他、多くのオカルティストたちが様々に取り上げていたこともあり、日本でも何度かブームが起こったようです。最近でも、スピリチュアルに興味がある人たちの間で、レムリアと並んで人気があるような印象があります。形而上的な探求においての共通認識として、アトランティスという名前が使われているようにも思えます。

そのアトランティスというものを、初めて文明として取り上げたのが、ギリシャ哲学者のプラトンです。「ティマイオス」「クリティアス」という著書で、ティマイオス、クリティアス、ソクラテス、ヘルモクラテスの4人の対話という形で話が進んでいきます。クリティアスのお祖父さんが、詩人ソロンがエジプトの神官から聞いた話として、アテナイ(ソクラテスたちの祖国)がかつてどんなに繁栄していたかということを、クリティアスに話してくれたそうなのですが、言ってみれば、その「素晴らしいアテナイの国」を語る上で、演出のような形でアトランティスが登場してくるといった感じでもあります。

アトランティスの成り立ちについては、そのむかし、神々が大地を分け合った際、ポセイドン(海の神)がアトランティス島を受け取り、人間の女に産ませた子をそこへ住まわせ、大地を砕き街をつくり、さらに次々と生み育てた子らを王とする10の王国を築き…というように描写されています。アトランティス島とは、〈ヘラクレスの柱(ジブラルタル海峡)〉の彼方にあった巨大な島で、その後地震のために海に没してしまったとあります。

あらゆる面で非常に優れた国家となったアトランティスですが、そのアトランティスに対して、アテナイは立派に戦い抜いたのですよ、とその戦の様子が語られていくと思いきや、この「クリティアス」は未完のままで終わってしまっています。ちなみにこの戦は九千年前のこと、とあります。

そして、この「クリティアス」が中断する直前、アトランティスの衰退(堕落)について描写されています。神々の高い徳が、人間と交わりすぎて薄まり、あらゆるところで衰退が始まっていくのですが、プラトンがここで物語を中断しているということは興味深いことかもしれません。


「クリティアス」解説より

    

〜プラトン全集12 ティマイオス 種山恭子 訳 クリティアス 田之頭康彦 訳 岩波書店〜



巷で語られるアトランティスと、プラトンのアトランティスには隔たりがあるようにも感じますが、物語として読みながら古代に思いを馳せるというのは、やはり面白いものですね。きっと多くの人がそこからインスピレーションを得て、形になる前の何かが、綿々と語り継がれているのかもしれません。


■超古代文明は存在したか

例えばこのように言葉にしたり、特定の名前がついてしまうと、それはおそらく当然、学術的には否定せざるを得ないものとなるような気がします。そもそもの話、それが物理的な形をとっていなければ、物的証拠は残りようがないわけです。各人それぞれの真実を大切に、創作物の中からエッセンスを抽出して、人生を豊かにしていけばいいのかなと思います。

ちなみに私は、手塚治虫の「三つ目がとおる」が大好きで、思い出すとなんとも言えずワクワクした気持ちになるのです。これも古代文明を扱っている創作物のひとつですが、内容云々よりもやはり、その奥に流れる何かを「思い出して」いるような感覚なのかもしれません…。