2021/06

目に見えないもの

「目に見えないもの」という言葉は、このサイトで扱う分野においては特に、ある意味当たり前のように使われていますが、ある時ふと「目に見えない」って一体どういうことだろう?という疑問が浮かんできました。普段から常に、「感じることでしかわからない世界」を身近に感じているからこそ、敢えてその「目に見えない」とはどういうことかを考えてみることで、改めてわかってくることもあるような気がしたのです。


■「目に見えない」とはどういうことか

ものを見るために人間が活用するのが、可視光線を含む「電磁波(広い意味での光)」と呼ばれるものです。普段目を使ってものを見る時に使うのが「可視光線」というわけなのですが、この「可視光線」が物質に反射し、その反射した光を人間の眼球がキャッチして映像として網膜に映し出し、電気信号にして送られたその映像を脳が認識する、という一連の流れが、ものを「見る」ということ。私たちは、光を見ているのですね。可視光線というのは、電磁波のうちのほんの一部であって、電磁波を大きく分けると、波長の長い方から、電波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、ガンマ線となります。

例えば、可視光だけでは見えない天体も、その他の光を使えば見ることができます。可視光線を発していない天体もあるのですね。通常の天体望遠鏡で肉眼を強化しても見えなかった天体が、電波望遠鏡やX線望遠鏡で見えてくるのは、その天体が放っている電波やX線をキャッチしているということなのです。また、赤外線を使えば、チリやガスに隠れて見えなかった天体が、姿を現すということもあります。


■可視光線以外でものを見る

可視光以外で天体を見るには、それぞれの光に対応した望遠鏡を使います。望遠鏡の仕組みはどれも基本的に、天体が放つ光(X線とか電波とか)を集める装置である「集光部」、それを電気信号に変換する「検出部」、そしてその信号を処理する、いわば脳の役割をする「処理部」となっているそうです。つまり人がものを見る仕組みを機械化したようなものですよね。

X線で見た宇宙というのはとても明るいのですが、詳しいことを知らない私などは、X線を見ることができない人間が、なぜ「明るい」とわかるのだろう?と疑問に感じてしまうのですよね…。熱量だったり数値的な強さだったりの理由はあるのでしょうが、その「明るい」は可視光線に置き換えたら、ということなのでしょうか?…わからないので一旦ギブアップします(笑)

何にせよ、私たち人間が「目には見えない」という時、非物質的なもの以外にも、可視光線で捉えることができない物質も含まれるということ。もしかしたら、非物質だと思われていたものが、可視光線以外を使えば物質だったなんてこともあるのでしょうか。電磁波以外にも「ニュートリノ」「重力波」を使ってものを見るということも可能だそうです。おなじみのこの「重力」にも波があって、その波を使ってものを「見る」なんて、なんだか不思議ですよね。


■ダークマター/ダークエネルギー

宇宙を満たしている成分の約7割が「ダークエネルギー」、約3割近くが「ダークマター」と呼ばれ、どちらもまだ正体が明らかになっていないのです。私たちが学校で習うような「元素」、つまり物質を作る成分として明らかになっているのは、たったの5%にすぎないのだそうです。地球以外に生命体が存在していたとしても、もしその存在たちを構成する成分が、正体不明の9割の部分であったなら、出会っていても気づかないはず。人がこの未知のエネルギーや物質を解明できるようになった時、一体どんな世界が見えるようになっているのでしょう。


■感じることでしかわからない世界

さて、私たちが見えている世界はホンのちょっぴりだということはわかりましたが、ではこのまま現在の科学で研究を進めていけば、いずれは今は見えないものが見えるようになるのでしょうか。それはもちろん可能性はあるかもしれませんが、よく考えてみたら、「見える」必要はなかったりもしますよね。感じている世界を視覚化することもできなくはないですが、感じるままでいた方がよほどリアルであるようにも思えます。私たちは情報の多くを視覚に頼って生きているため、見えるということを重視しがちですが、当然ながら人は目だけで生きているわけではないので、そこにこだわる必要がそもそもないのですよね。

ただ、肉眼で見えないものが、可視光線以外の光で見えるようになる、なんて聞くとやっぱりワクワクするし、「重力波」で見えるものってどんなだろう?と、興味が尽きないことも確かです。「感じることでしかわからない世界に想いを馳せる」と、自ずと探究心も湧いてくるものなのかもしれません。