インドの思想史には、何やら不思議な響きの言葉がたくさん出てきて、それがまた魅力のひとつでもあります。ヨーガの指導においては、「不立文字」という態度はとらず、なるべく言葉にして伝えようと試みるのだそうです。使われている言葉を理解しようとすることで、何かそのエッセンスみたいなものに触れることができるかもしれません。なんとなく残る言葉の響きを楽しむだけでも面白いかなと思ったりします。
以下に、インドの思想においてよく使われている用語をリストにしてみました。
ダルシャナ | 哲学。サンスクリット語で〈見る〉という意味の語根から派生。人間存在、または世界に対する洞察を意味する。インドでは、哲学は見ることの一種。 |
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ウパニシャッド | 「ウパ(近くに)」「ニ(下に)」「シャッド(座る)」。ヴェーダの奥義書。ウパニシャッド哲学。 |
プラティヤクシャ | 直観。知覚。インドにおける、正当な知識の源泉(プラマーナ)のひとつ。 |
ブラフマン | 宇宙の根源。ウパニシャッドでは言語を超えたもの。 |
アートマン | 自我。個我。真の実在。輪廻の根拠。 |
プルシャ | 精神的原理。純粋精神。霊我。サーンキヤ哲学における二原理。 |
プラクリティ | 物質的原理。根本物質。原質。世界の実質的形成をおこなう。サーンキヤ哲学における二原理。 |
グナ | プラクリティの要素。サットヴァ・ラジャス・タマス。 |
サットヴァ | 純質。知性の要素。 |
ラジャス | 激質。経験、動力の要素。 |
タマス | 暗質。慣性の要素 |
マーヤー | 迷妄。暗黒。幻影 |
アヴィディヤ | 無知。錯覚。 |
ダルマ | インドの宗教における主要概念。言語化が難しいとされる。法。正しい行為。 |
サマーディ | 真の精神集中。 |
スムリティ | 真の概念を知る直観力。 |
サンヤマ | 自己の集中。意識の完全な集中。 |
ブッディ | 覚。知性。 |
アーナンダ | 至福。喜び。 |
マナス | 意。思考器官。感覚意識。 |
サット | 真理。実在。善。 |
アサット | 反真理。悪。 |
アヌ | 宇宙原子。宇宙を構成する最小単位。 |
チット | 意識。全知の愛。 |
アハンカーラ | 自我意識。 |
チッタ | 心。 |
アーサナ | 安定した楽な姿勢を維持すること。 |
ヨーガ | 「馬などをつなぐ、結びつける」を意味する語から派生。心の作用を統御する。心を統一する。 |
クリヤ | 語源は、行う、作用する、反応する。特定行法による神との合一。「クリヤ・ヨガ」 |
バクティ | 献身。ヴィシュヌ神への献身。「バクティ・ヨガ」 |
プラーナ | 生命エネルギー。気。息。 |
ニローダ | 統御。止滅。「ヨーガとは心のニローダである(ヨーガ・スートラ)」 |
プラーナーヤーマ | 不随意神経に働く生命エネルギーを制御すること。調息法。 |
プラティヤハーラ | 外界に向かって働いていた随意神経の生命エネルギーを引き揚げて、内面に集中すること。 |
ヴィーリヤ | 堅固な求道心。 |
ヤマ | 宗教的戒律。禁戒。 |
ニヤマ | 宗教的規範。勧戒。 |
カイヴァリヤ | 究極の解脱。至上霊との合一により、宇宙には自分以外になにものも存在しないことを悟る。唯我独尊。 |
◆主な参考書籍◆
・「インド思想史」早島鏡正/高崎直道/原実/前田専学 著 東京大学出版
・「ヨーガ根本経典」佐保田鶴治 著 平河出版社
・「ウパニシャッド」佐保田鶴治 著 平河出版社
・「ヨーガの哲学」立川武蔵 著 講談社学術文庫
・「哲学の技法」ジュリアン・バジーニ 著/黒輪篤嗣 訳 河出書房新社
・「聖なる科学」スワミ・スリ・ユクテスワ SRF
・「あるヨギの自叙伝」パラマハンサ・ヨガナンダ SRF
・「バガヴァッド・ギーター」上村勝彦 訳 岩波文庫