2021/10

タパス

■タパスとは?

ヨーガのお話によく登場する「タパス」という言葉。”苦行”と訳されたり、”忍耐”と訳されたりしていますが、語源は「熱」であり、自らの中の不純なものを焼き払う意味があるそう。この「熱」を生み出すのが苦行であり、忍耐であって、例えばそれが断食であったり、厳しい状況を耐え抜く修行だったりするわけです。何だか敬遠したくなるような言葉ですが、このタパスということの本質みたいなものは、実は私たちの人生にとって(一周回って)大事なことが含まれているように思います。

もうずいぶん前から「がんばらない」というキーワードが流行り出して、力を抜いて、ゆるく、好きなことを…のようなことが推奨される場面は多く見てきました。ゆとり世代なんて言葉もそのような傾向を象徴していたのでしょうか。ゆるキャラが流行したり、ゆったりファッションが定着してきたこの時代の流れを経て、気づけばぬるま湯に浸かっていた!?なんてことも、あったり、なかったり…。

現代日本にいる私たちにとっては、おそらく厳しい状況環境にさらされているというよりは、よくわからない閉塞感や窮屈さ、知らず知らず流され、自分を見失ってしまうことに対する危機感の方が強いと思います。なぜしんどさを感じるのか?辛さを感じるのか?と言えば、多くの場合それは、自分自身が弱体化してしまっているからで、フニャとなった自分に芯を通すことで、すっと楽になったりするものです。その芯というのが、タパスなんですねきっと。


■ゆるみすぎた時の回復方法

自分の中に、熱を生み出す、芯を通す。現代のヨーガなどでよく勧められているのが、自分で決めたことをやり通すことで意志の力を強くするというようなもの。ヨーガのちょっと辛いポーズを維持することも一つの方法であったりするようです。早朝に起きる、甘いものを断つ、プチ断食をするなどなど、それらをやり遂げることで、意志の力を強めることが狙い。タパスを生み出し、弱い自分を焼き払ってしまうのですね。


■タパスの本質とは

そしてそれで、どんな境地を得るかというと、”いかなる環境のもとでも心を平静に保つということ”なのだそう。例えばそれは、毎朝6時に起きるぞ、と決めたにも関わらず二度寝してしまった!という時にも心乱さず、その瞬間からできることを淡々とやるということでもあります。

逆に言えば、もし先に、その心の平静さをもって事に挑むことができれば、そこには自然とタパスが通り、無理な力をかけずともやり抜くことができてしまう、ということであったりします。 インド思想においてのタパスは、より精妙な体(幽体)を純化するものだそうなので、そういったことも念頭におくと、理解が深まるのではないかと思います。目に見える現象に一喜一憂することなく、揺らぐ心をも冷静に観察できるようになっていくのでしょう。


■自分なりのタパスを生み出し活用する

これだけ多くの選択肢や誘惑の多い世の中で、単純に断食をしましょう、甘いものを断ちましょうといって一時的に意志の力を強めてみても、その場凌ぎになってしまったり、単なるゲームに終わってしまったりしがちかもしれません。 よくわからない息苦しさを感じると、人は割と極端な行動に出がちだったりもします。自分自身に負荷をかけることで、楽になったような気がしたり。

自分なりに、タパスということの本質を取り入れて、すっと芯が通る感覚というものを定着させていくといいのかなと思います。ゆるめすぎたら締める、締めすぎたらゆるめる、という自然の感覚も忘れないでいたいですね。